職場の人間関係に疲れたアラサーにオススメ 共感せずにはいられない

ワークライフバランス

「結局我慢する人とできる人とで世界が回っている」(本文より)と
もやもやイライラしている方は共感せずにいられません。

ままならない職場の人間関係を描いた芥川賞受賞作「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子著。

「王様のブランチ」で紹介された時には感じなかった本書の本質を
ETV特集「芥川賞を読む。~“正しさの時代”の向こうへ~」で知り、読まずにはいられませんでした。

それなのに、2022年9月24日の初回放送から再放送されていない…何かあったのでしょうか。

「芥川賞を読む。〜“正しさの時代”の向こうへ〜」 - ETV特集
「結局我慢する人とできる人とで世界がまわっていく。世界。この世界。」史上初めて、芥川賞5人の候補全員が女性となった。文学は、今の時代を映し出す。「刺青の下の皮膚」「ばばあのゲロまみれの衣服」「LGBTの人で固定されてしまった」他者からカテゴライズされる苦しさ、“正しさ”の時代の影。5人がそれぞれに描く、この世界。「そん...
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職場の人間関係の辛さ、難しさといったら

職場の「状況」としてはとてもよく理解できるのですが、
人間関係や仕事観としては今どきというか、娘や息子世代(アラサー)ってこうなの?と
親世代のアラカンには衝撃的でした。

本書は男性の二谷と女性二人が所属する最小単位の職場での物語です。

二谷が言う「最強の働き方」は確かに経済的には最強だったと過去の経験から痛感しています。

そして押尾さんが芦川さんを「むかついて、うらやましくて、ああはなりたくない、嫌い」という感情もとてもよく理解できます。

でも「出来る人のプライドは持っていても、出世はしたくもない」や「毅然が足りないとは感じても好感を持てる」など矛盾する感情が今どきなのでしょうか。

二谷の結婚観もとても不思議な感じがしましたが、
これがアラサー、アラフォー世代で未婚の訳を親が理解できない一端なのかもしれません。

芦川さんの造形は女性誌を読むようだと感じた私、というよりも著者の筆力は冴えています。

私の中に形作られた「造形」は容姿ではなく行動や会話だけで成り立っているのですから。

正しい働き方とは

誰でもみんな自分の働き方が正しいと思っている」は
働くことについて考え続け、発信してきた私にとって至言というか、突き刺さる言葉でした。

「結局我慢する人とできる人とで世界が回っている。」
この言葉の前には
「限られた回数のお互いさまの時だけ頷けるルール」
「世界。この世界。わたしが生きて手の届く範囲の世界」が痛切に響きました。

ワークライフバランスの講師として、子育てや介護など働き方に制約がある人と、
働き放題が可能な人も有給休暇を取れるお互いさまの気持ちが大切だと説き、
30年前までは労働組合の専従者として増員や制度・法律の整備を求めて来ました。

でも今、労組とか、国の制度なんて残念ながらというか、
私たち世代のせいで、遠い遠い現実味のない手の届く範囲の世界ではなくなってしまいました。

ただ、権利とか人権というのは隣の人へ要求するものではなく、
統治者(国や経営者)に対して要求するもの
だと、
宮台真司氏が言っていたのは原理原則として記しておきたいと思います。

アラサーの価値観、感性に驚きを隠せない

人並み以上に出来ると思われていたい承認欲求はあるけれど、欲しいのはそこまでのようです。

やり甲斐や達成感、地位やお金への欲求には繋がらないようです。

「仕事」はしたいことばかりでは決してないけれど、
総体としては人生で一番長い時間を費やすものだから、
そこに価値を見つけたいとは思わないのでしょうか。

スーパーやコンビニに行けばそこに作られたものがあるんだから、わざわざ自分たちで作らなくたっていいんじゃないかと思っている。(中略)
ただ毎日生きていくために、体や頭を動かすエネルギーを摂取するための活動に、
いちいち「おいしい」と感情を抱かなければならないことに、
そしてそれを言葉にして芦川さんに示さなければならないことに、やはり疲れる。

二谷の独白 68ページより

どこに生きる喜びがあるのだろう、何をどのように食べて「育って」きたのだろう
と思ってしまうのは間違いなのでしょうか。

二谷の背筋がすっと冷える。(中略)
おまえもぐるかよ、と二谷は苦々しく思うのだけど、
「いや、なんすかもー」とわざとらしくとぼけ返してしまい、
自分で自分を痛めつけたくなる。

死にたくなるのはこんな時だ。
死んで、ほら死んだ、ざまあみろと、
誰とはなしに投げてぶつけてぐっちゃぐちゃになってしまいたいし、
なってしまいましたって言いたい。

93ページより

この退廃ぶりって…
20代末でそこそこの生活をしていながら、こんな風に日々を生きていることは衝撃的でした。

それは内心の細かな描写と同時に
メタ認知により巧妙に作り出す外面(そとづら)との対比には人間不信になりそうです。

二谷から「ババアはそんなに他人を信じて生きて来たのかよ」と言われ…思われそうですが。

勝負、正邪、強弱、の『常識』が「当たり前だった」と一声で反転する
現代の職場というところはさぞ生きづらいかろうと、初めて「生きづらい」を肯定できました。

押尾さんは「おいしいって人と共有し合う」ことがすごく苦手だと自覚し、
それは成長として手放した能力だと言います。

NHKのヒューマニエンス「“胃” 生きる喜びを創る臓器」で知った、
『「胃」は喜びを生み出す臓器。
食の喜びはもちろん、脳や心と密接につながることで、生きる喜びを創る。』の、
胃と脳が繋がっていることにも通じる小説だと思います。

本書の中では「喜び」や食を通した他者との繋がりを否定している点で、
極めて現代的でありそれを進化(成長)とするか、
退化と捉えるかは読み手によって分かれるところでしょう。

NewsPicksの番組「WEECLY OCHIAI『ざんねんないきもの』からの教え」回で語られた
長いスパンで考えるか、文化的側面を重視するかでも変わりますが。

「ざんねんないきもの」からの教え
シリーズ累計480万部を突破し、今年夏にはアニメ映画化もされた大人気シリーズ「ざんねんないきもの事典」。動物たちのどこか「ざんねん」な一面を紹介しながら、進化の不思議を伝えるこのシリーズの監修を担っているのが、動物学者の今泉忠明氏だ。50年以上に渡り動物の生態をつぶさに観察し続けてきた今泉氏が説く、一見「ざんねん」と思...

励ますのはカンタンにはとても共感

不透明なガラス越しに彼らを観ているようでしたが、とても共感した点もありました。

他人に頑張れって言って励ますのってすごい簡単じゃないですか。自分を励ます方が絶対難しい」は
超わかるし、とても嬉しくなりました。

アスリートはいつも応援に感謝しています。プロはそれとしても、
マラソン大会の沿道の応援に感謝感激して力になったというメディアの多いことと言ったら!

実は私沿道からの応援が嬉しかったり、それが力になったことって無くて😅

給水所やエイドなどを運営側の多数のボランティアは本当にありがたく感謝しています。

私設でも青梅マラソンでお馴染みのここぞという場所で流してくださる
ロッキーのテーマとかはもの凄い力になります。

でも、頑張れーって声をかけられてもねー。

東京マラソンの「10回落選のオレの分まで頑張ってくれ‼️」は刺さったけれど。

声を失うラストの一文

無駄なシーンや会話はひとつもなく、様々な形で伏線として回収されるのは良書の醍醐味です。

最後から2ページめの最終行でたぶん初めて蘆川さんの容姿のある「部分」が二谷の視線で語られます。

それはほんの「小さな部分」なのですが、
そこに気が付く二谷と今どきの女子がそこを重視することを不思議に思っていた私への回答でした。

そしてページをめくって2行目の最後の短いひと文に私は打ちのめされました。

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