政権与党や上級国民嫌いも、無関心層も喜ぶエンタメ小説、これぞサーカス

ワークライフバランス
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島田雅彦の著書「パンとサーカス」はギリシャ神話の女神や人間の描写にある真実、
ドストエフスキー、韓流の技巧、などを日本の現実に落とし込んで
全面展開した最高のエンターテイメントでした。

安倍元総理銃撃を予言したかのような内容と
21世紀のあらゆるアレコレを想起させる内容は、
直近の未来をも見通しているかもしれません。

一気読み必至のエンタメ小説です。

「総理大臣暗殺」が23ページめに

どんな番組出演でも島田雅彦氏自身が「テロは許されることではない」と
念を押されていることを踏まえたうえで書くと、
577ページの大著の最初の23ページめで
「総理大臣を暗殺する」が登場します。

主人公二人(寵児と空也)が高校時代に、
飽きることなく結論の出ない議論を重ねる場面での
「死ぬ前に何か一つ善い事をするとしたら、何をするか?」の答えの一つとして。

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様々なテーマで繰り出される二人の妄想と科学が入り混じった知的会話はなかなか面白いものです。

それでも、事実は小説よりも奇なりと古今東西で言われる事態が進行しつつあるのが
2022年7月中旬以降の日本です。

島田雅彦氏と宮台真司氏は対談の中で、
暗殺容疑者が一番驚いている展開なのではと言い、
古舘伊知郎氏がオリ・パラ関連で最初の逮捕者が出た段階で
「地獄の窯の蓋が開いた感」と称したのは
長きにわたるキャスター歴の中で培われた巧妙な表現でした。

それでも、本書のテーマである「世直し」まではいかないのが現実です。

だからこそ、エンターテイメントとし価値が爆上がりの今、
どんどん読み進められ、溜飲を下げるにはこれ以上ないほどの面白さを提供してくれます。

社会の多様性や重層性を知っているほど、
喜怒哀楽を味わえる仕掛けになっているのではと感じます。

自分の知識が増えるごとに、面白さや予言性に驚かされることも多いのかもしれません。

仮想空間も充分に描きながらも、メタバースというバズワードを
あえて1箇所も使わないのも憎いところでした。

労災・不正隠しと対米従属の心性

高校生の空想から現実社会への復讐の転機になるのが、
寵児大学三年生の春に家族を襲った不幸の落雷です。

人間不信になるほどしばしば報道される組織的な不正と、
そこにまつわる自死と労災認定・裁判の実態を教えられます。

寵児の経験とそれとは一見別の疑問、
永続的に続く日本の対米従属について根本から研究したいと米国に留学します。

寵児の論文「元型を乗り越えて 国譲り神話から占領政策まで」に結実する
3ページにわたって綴られる考察だけでも一読の価値が有りました。

信仰を持たない人が多い日本人の不思議も、

善きサマリア人のエピソードと「善きサマリア人法」の存在から浮き彫りになります。

善きサマリア人の法 - Wikipedia

これは宮台真司氏がたびたび発する「法の奴隷」という言葉の意味を
「罪」や「刑法」とともに考えさせられます。

本書には多くのアフォリズムがありますが、私にとって発見だったのは
「人間は弱いし、怖いが、植物は強く、優しい」でした。

空也が見つけた、都内女子校御三家出身の4人は身近さもあり興味をひきました。

もし、〇〇に逮捕されても、××が弁護士、△△が記事を書き、●●が先生に口利きしてあげると
連携を口にする様はリアルです。

その上で「『正義の味方になりたい』とか『世のため人のために働きたい』などと
真面目な顔をしていう四人は、まだ自分が踏み出した世界の表面しかみていなかった」
と語る著者島田雅彦氏に痺れました。

この一文があるので、続編はきっとあると思っています。

3.11後の「サーカス」に慄然

「あろうことか、原発の安全対策を怠った張本人がのちに首相に収まった」世界で物語は進みます。

震災後に政権交代があり、世襲の愚鈍な男が首相に収まると、政治のマフィア化は一層進み、公然と不正がまかり通り、貧富の差は拡大の一途を辿った。にもかかわらず、市民はサイコパスに洗脳さあれたかのように無為無策の政権を支持し続けた。

75ページより


オキシトシンやドーパミンは最近よく使われますが、
「他人に親切にすると気分が上がるメカニズム」や
「ヘルパーズ・ハイ」という言葉に初めて出会い、何かしら私を納得させるものがありました。

CIA、内閣情報調査室、官邸官僚、戦闘機の爆買い、米中関係

映画や小説などで垣間見たコトや報道の断片にあることを詳細を読むのはワクワクしました。

とりわけ、米中関係のホントのところをスパイの存在ととともに
とうとうと語られる場面はまるでゴルゴ13(よく知らないけれど)のような。

内閣情報調査室とCIAの技術的、モラル的相違も驚きです。

これがホントならば。

半分が世襲議員で、極右系の宗教団体の全面的支援を受けている与党が永遠にえ政権の座にとどまれるよう奉仕することが優先順位の一位であって、テロ対策は二の次

193ページより

「政府に服従する喜びを知ってしまった者はそう簡単には態度をあらためない。」
とありますが、政府とは権力・名誉・資金の総本山とすると、あらゆるところで、
しかも僅かでも「得をする」ことを喜びとするさもしい態度を、
宮台真司氏が言う「反権威の権威の側」に見て来ました。

テロへと疾走していく主人公

ちょうど後半から始まる第二部は、
犯罪・警察小説にメタバース(仮想空間)を織り込み、主人公とともに物語が疾走していきます。

「自由よりも管理の徹底を求める自発的服従者たちから見れば、
内部告発者も悪政の批判者もテロリストも皆、等しく反逆者だ。」
この両者の闘いが始まるのです。

大きな枠組みの闘いの中で寵児が感じた仮設は想像通りか否かが読者の興味を引っ張ります。

そして500ページを過ぎ、終盤の主人公の一人空也の最終陳述

権力を持つ者はなぜかくも横暴で、節操がないのか、と。

税金、公金を私物化し、使途も明らかにせず無駄遣いする一方で、

福祉を切り捨て、弱者、貧者をとことん追い詰める。

違法なことをいくらやっても罪を問われない、

そんな無法者たちに権力を行使させた責任は検察官、裁判官のあなた方にもあります。

そして、特に理由もなく彼らを支持し、服従してきた

無知で、無関心な有権者もあなた方と同様に罪深い。

彼らは誰も傷つけない、騙,したり、裏切ったりもせず、礼儀正しく、おとなしい。

彼らの沈黙の同意によって、腐敗政治がいつまでも続いたのです。

504ページより

その時に仮想空間では英雄を讃えるお祭り騒ぎです。

しかし、小説の中の現実で空也は「指ハート」示すしかありません。

不幸の民主主義に甘んじているこの国の人々に、
巧みにリアリティを感じさせながらエンターテイメント、まさにサーカスを提供してくれます。

「もし不平市民が組織的に動員され」との文言がありましたが、
そうしたことが有り得ないと確信出来ることが、私は幸いだと思っています。

ウクライナのように代理戦争の舞台にだけは

長い本書のラスト30ページは著者島田雅彦氏の切ない願いのように終わります。

ここまでは膨大な過去の事実を全面展開しながらなぞるように物語は進んで来ました。

しかし、現実世界は未来へと向かって刻々と進んでいます。

日米同盟の先にあるのは中日戦争であり、
日本がシリアやウクライナ等のように代理戦争の戦場にだけはなってほしくありません。

何度か本書に登場する言葉、今まさに現実を見せられている
「売国奴が一番偉い国」の世直しが成ることを願います。

クールに振る舞うのは愚か者と呼びかける「ヘイジュード」が身に沁みるように聞こえてきます。

ヘイ・ジュード Hey Jude 歌詞 和訳 意味 ビートルズ
世界の民謡・童謡

引用元:Webサイト『世界の民謡・童謡』

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