「こんなはずじゃなかった」人生、会社、学校にいる人にオススメの本

読書学び
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誰でも、別の人生や会社・学校を選んでいたらという時がありますが、
朝井リョウ氏著「どうしても生きている」を読んだら少し気持ちが変わると思いました。

立場が異なる主人公による6編は著者30歳の作品とは信じられない人生の深みがあり、
ラストは誰の人生にも陽が差すと。

自分の人生にあらためて感謝し、発してきた浅はかな言葉を反省しました。

是枝裕和監督の帯の言葉に惹かれて

確かにあの時私たちは

こんな絶望と幸せの手前で生きていた。

生きざるを得なかった。

十年後に『どうしても生きている』を読み返しながら

きっと私はそう思うに違いない

との言葉を2019年刊行の帯に寄せています。

2020年以降、絶望の深さは想像もしなかった形で深まりました。

それ以前からの「無敵の人(社会的に失うものが何も無いために犯罪を起こすことに何の躊躇もない人のスラング)」による無差別殺人や
2022年7月の安倍元総理銃撃を、終わりの始まりだったと思い返すのでしょうか。


社会の変化とともに、自分自身や家族がどのように生きているのか、
本書をひとつのメルクマールとして、10年後に私もきっと読み返すと思います。

それにしても、朝井リョウ氏の感性と技術に圧倒されました。

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死んでしまいたい、と思う時

「死んでしまいたい、と思う時、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない」

「健やかな論理」帯の説明文

最近話題のミステリーに勝るとも劣らないストーリー展開です。

経済的にも精神的にも独立した関係だった夫から離婚された佑季子が主人公です。

恵まれた環境にいながら「満たされない」人間の危うさを私は初めて知った思いでした。

主人公に共感する人、
なんとなくモヤモヤしていた不全感を言葉にしてもらったと感じる人は多いと思います。

それでいて「健やかな人」さえも共感できるラストになっています。

結婚は一人でも生きていける人間同士がするもの、と考えている私ですが、
「観たい映画も読みたい本、行きたい舞台や食べたいもの。
自分のリズムでひとつずつ消化していく…」を理解しがたい私は
「健やかなのか?」と思わずツッコんでしまいました。

生きているうしろめたさって

家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対してうしろめたくなくいられるのだろう

「流転」帯の説明文

一話目は佑季子の「現在」の話しに対して、
二話目は20余年にわたる豊川の「流転」を描き出します。

しかも、MCバトル、ラッパー、バンドの歴史とともに。

「産休」描写の不正確さや「介護」の描写や想像の浅さは気になりました。

しかし
「今後新しくどこかが拡大していく予感のない家系図の中にいる自分たち」
という表現は忘れられません。

少子化、人口減少と毎日のように聞かされる中で、
それを個人のイメージに落とし込むと、こういうことなのかと思い至りました。

42歳の主人公は裏切り続けですが、人生がまだまだ続く中、確かな成長があった気がしました。

命を引き延ばすものは何か

あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている

「七分二十四秒めへ」帯の説明文

二話目の主人公・豊川は42歳の男性でしたが、
三話目は42歳の女性・依里子の話しです。

契約を更新されなかった50歳の先輩の心の内などが情景とともに描かれ、
自分のもしかしたらの別の人生を思いました。

女性派遣労働者については、しばしば報道されますが、個々の胸の内に迫る傑作です。

私は上島竜兵さんが亡くなったときに、
こんなにも彼の笑いが愛され、
救われたという人の多さに驚きました。

その時に感じたことのさらに先にあるような物語です。

「自己責任」という言葉を使わずに
「だからこうなったんだろうな」と独白で表現されると、その染み付き加減に驚きます。

「生きづらさ」が何によってもたらせられるか、
そして息ができるのはどんな時かに容赦ない切なさを感じさせます。

でもね、若い人には伝えたい。
依里子が「いいなあ。」と羨む生命体がわが子なら、
そこには自分の幸せも達成感も同時に味わえるということを。

今の生活を変えられない理由は

社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめました。

「風が吹いたとて」帯の説明文

三話目が独身女性依里子の切なさならば、
四話目は45歳で中高生の子どもがいるパート勤務の既婚女性由布子の中に溜まっていく怒りを克明に綴ります。

それと、近くにも遠くにもたくさんあるサラリーマンの苦悩をリンクさせています。

子どもたちが自分そっくりだと気づき、
そして生きなければならない明日のために開き直る強さをみせるけれど…

本当の痛みの在り処とは

「尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が移されているような気がした。

「そんなの痛いに決まってる」帯の説明文

五話目はIT企業に勤める34歳のDINKS(ダブルインカム・ノーキッズ)良太が
周囲の関係性とともに変化する内面が明らかになります。

「思ったことをそのまま口に出す」ことの必要性が、
特化型求人サイト、QRコード決済、ライブコマースを展開する職場の様子とともに描写され飽きません。
良太のマチズモ(男性優位主義)に共感してしまう人には辛い作品かもしれません。

親ガチャから人生ガチャだらけ

性別、容姿、家庭環境。生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。

「籤」帯の説明文

最後は39歳の妊婦であり劇場ホールのフロア長みのりの濃密な2日間の話しです。

「親ガチャ」に始まり、人生はガチャだらけだと教えられます。

親を選ぶことは出来ませんが、
自らが選んだはずのヒト、モノ、コトに「ハズレ」るとはどういうことなのか、
どうなるのかなど深く考えさせられました。

「こんなは」で「こんなはずじゃなかった」と予測変換されたことに驚きました。

「ずはない」「ずとは」などいろいろあるはずなのに、こんなはずはない!と、思ってしまいました。

「はず」って何だろうとあらためて調べると
「事が当然そうあるべきだの意を表す語。予定や道理」とのことでした。

「筈(はず)」と「籤(くじ)」をめぐる人生の物語です。

こんなはずじゃなかったと思っている人、
幸運にもそんなめにはまだ合っていない人の双方にオススメします。

美輪明宏さん信者ではないけれど「正負の法則」だけはなんとなく、
そうだなぁと思っているので、これからの人生へ耐性は高めておいたほうがいいかと。

ストーリーが芝居の脚本や演出と重なるところ、事件、重要ではない人物の大きな役割、など
小説としての巧みさとともに、最も深く感じ入りました。

特に最後の四行といったら…。

その前のラスト4ページで既に泣いていたけれど。

各短編で繰り返される言葉は

それぞれの物語で繰印象的に使われている言葉をご紹介して終わります。

「私の精神の内面はずっと凪いでいた」

「リアル。熱。切実さ。本音。嘘のなさ。」

「人を振り分ける」

「考えることは半径五メートル以内にたくさんある」

「大丈夫」

「ポコポコ、にょろにょろ、とんとん。」

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