社会保険労務士 資格取得後 事務所開業費用と廃業した理由

人生100年時代

 

「学ぶことの意味は大きいが資格取得の意味は小さい

のが社会保険労務士資格だと経験から思います。

行政書士試験に合格し、次は社会保険労務士に挑戦と意気込んでいる方、

現在人事や総務で関連のお仕事をしている方、

社会人として役に立ちそうな試験内容からも30年にわたって人気資格であり続けています。

しかし、資格取得後についての情報は多いとはいえませんので「合格後」をご紹介します。

社会保険労務士は難関資格の1つといわれ、合格率は7%前後ですが、

この四半世紀で毎年3000人前後が新たに合格しています。

全国社会保険労務士連合会には4万人が登録し、

その中の東京都社会保険労務士会には1万人が所属しています。

どの位の社会保険労務士がどのくらい稼げているかよりも、

自分がどのように稼ぐかのイメージやメンターがいるかどうかが重要だと思います。

学ぶことの意味は大きいが資格取得の意味は小さい

TACで私がお世話になった岡根一雄先生はご著書「社労士試験 はじめて講義」で

繰り返しこのように書かれています。

社会保険労務士の試験科目は「ひとりひとりの人間を大事にする、大切にする」法律だと。

私もそうでしたが、ここに惹かれて勉強を始める方は多いのではないでしょうか。

試験科目は下記の10科目です。

どれをとっても社会人として知っておいたほうが良い内容です。

むしろ、概略さえ知らない社会人がほとんどであることは恐ろしいことに思います。

労働基準法

労働安全衛生法

労働者災害補償保険法

雇用保険法

労働保険徴収法

労務管理その他の労働に関する一般常識

社会保険に関する一般常識

健康保険法

厚生年金保険法

国民年金法

一方試験内容は

○選択式試験8問を10:30~11:50(80分)

○択一式試験70問を13:20~16:50(210分)

全科目で7割以上の得点を獲得することはかなり難しいことです。

しかも、法改正が頻繁な分野です。

ただでさえ似た文言の似た数字を正確に覚えるには各法律の横断的整理が必要なのに、

法改正での覚え直しはさらに混乱するので短期決戦が有利でしょう。

社会保険労務士を名乗るための費用は281,600円(東京で開業)

東京で実務経験無しで開業する場合には名乗るだけで281,000円かかります

内訳は

実務経験2年が無い、証明できない場合は登録申請の前に

事務指定講習を受けなければなりませんが、その受講料は75,600円

【登録費用】

 1.登録免許税 30,000円 (収入印紙又は税務署へ現金で納付した場合の納付証明書は申請書正本に貼付)

 2.手数料 30,000円

 3.社労士会への入会金、年会費

東京都社会保険労務士会の場合

開業会員(法人社員含む)              入会金 50,000円  年会費 96,000円

勤務等会員                      30,000円                42,000円

各都道府県社労士会により金額は異なります。年会費は概ね似たような金額ですが、

大阪府社労士会の入会金は 開業社会保険労務士 法人の社員ともに        150,000円

                          勤務等でも      100,000円    

どこに所属するのか確かめておくとよいでしょう。

資格手当がつく企業の場合、勤務社労士として登録が必要か否かも大きな点ですね。

実務経験が有り、勤務社労士として登録する場合でも東京では132,000円は必要です。

この登録制度をあなどってはいけません。

自粛警察ならぬ登録警察がいるようで、私は廃業届を出した一年後に

サイト上に「社会保険労務士」と残っているページがあるとの指摘があったと

社労士会から連絡を受けました。

登録費用はかかりますがその他の開業費用はほとんど必要ありません

開業の登録場所は自宅で可能です。

実際の仕事は今や様々なワーキングスペースがあるので

守秘義務が守れる場所ならどこでも大丈夫です。

あとは、名刺や社労士印を作るぐらいでしょうか。

総務部に頼めば済んだものも、自分で足を運んで作る必要があります。

いよいよ、と嬉しかったのと同時に名刺や印鑑ってこんなに簡単に

「自己申請」で作れることに驚いたりもしました。

印鑑は廃止の流れですが、まだまだ請求書や領収書に必要な時代、

というか顧問先には要求されると思います。

報酬をもらう相手は誰かの考察、想像力が一番重要

報酬をもらう相手は誰かの考察、想像力が一番重要だと思います。

「ひとりひとりの人間を大事にする、大切にする」法律を学んで

晴れて社会保険労務士になりましたが

仕事として報酬をいただく相手は主には中小企業の経営者です。

会社から報酬をいただく以上、その額以上の利益を会社にもたらさなければ

顧問契約も、スポット契約も成立しません。

従業員より会社、自分の利益が大事な経営者がほとんどだと思って臨む必要があります。

20年以上前から、今後は第三号業務のコンサルだと言われていましたが、

人件費の節約が求められると読み替えたほうがいいでしょう。

在宅ワークや副業解禁など働き方の変化によって

社会保険労務士の出番は増えると「資格ビジネス」は宣伝しています。

しかし、Uber Eatsに代表されるギグワーカーに関する法律は未整備です。

副業中の労災補償について2020年9月に

「労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変更」

されましたが、この適用には特定社会保険労務士でも難しく、

しばらくは弁護士の出番のように思えます。

日本医療労働組合連合会の書記局に勤めていた私は、

まず試験科目が本当なら書記局員や役員はもとより書記全員が知っておくべき知識だと思いました。

のちに、傘下の役員にひとり合格された方がいましたが(未登録で名刺を作り問題になりましたが)

上司にも歓迎されないような有様でした。

(当時の有様の片鱗はnoteに

https://note.com/j_takebe/n/ne7d80eccf5c5

労使争議を傍からみると、

労使ともに法律をきちんと知っていれば回避できたのではという感じを多く持ちました。

こじれてしまったから争議と化してしまったように。

労使ともに大きなマイナスとなる争議を未然に防ぎたいと思いました。

しかし、これは「報酬の出どころ」と合致させることは困難でした。

二番目に、仕事がら厚生省や労働省(当時)の予算を見ると助成金の項目がありながら、

多額の助成金が使われておらず、有効活用したいと思いました。

これは偶然SVCに出会ったことで、助成金活用の最先端として数年は順調そのものでした。

助成金は利益そのものなのに普及しておらず、大変喜ばれ経営者どうしでの紹介も多くありました。

しかし、美味しい仕事には競合が群がり、助成金そのものも減額、減少傾向になりました。

大企業勤務経験者ほど開業後のハードルは高い 異世界だから

大企業出身の方々には開業のハードルが高いと経験上思います。

顧問先の中小企業の実態は想像を超えていました。

賃金表が無い会社が想像できていますか。

創業社長の傲慢さを身近にした経験がありますか。
(営業部門の方なら当然ご存知でも管理部門出身者の場合には高いハードルです)

すでに税理士の関連やお付き合いのある士業が入っている中で顧問先の変更は困難です。

一方、新会社を立ち上げ人を雇うには
社会保険・労働保険の新規適用届は平成15年まであった標準報酬表では20万円の仕事でした。
知らない、わからないからこそ任された訳ですが、
人間関係や信頼関係を構築する間もない最初の仕事ですから、
要望がめちゃくちゃで作業量に比して難しい案件でした。

今やその標準報酬表もなく、ネット上に詳細な説明があるのでどれだけの需要があるでしょうか。

士業で稼げるようになる苦労の証として、自分が顧問先を見つける前に

「顧問先開拓手段の営業をされる側」になり、

当時はFAX、その後メールでの勧誘には閉口しました。

また、こちらが出費する怪しい雑誌取材や出版の誘いも多々ありました。

社会保険労務士として成功しているのはではどんな方々か

こうした困難を乗り越えて成功している先輩や同期の特徴は

開業時に太い繋がりのツテがあり、そこから展開できた方、つまり人脈と地域の繋がりです。

一時「人脈づくり」の異業種交流会など流行りましたが、

人脈は作るものではなく、出来るものだと思います。

今の仕事や環境の中で人脈は出来ているでしょうか。

また、中小企業の場合は地域での役割りや繋がりが大きいことも新鮮でした。

こちらからのアプローチが可能な繋がりをお持ちでしょうか。

団塊の世代の定年退職時や消えた年金問題があった頃には

年金に特化し専門家として活躍している方もいますが、

今からでは「助言者」的な立場はあってもそれが大きな報酬にはつながりにくいと思います。

「経営者が好き」と公言している大成功している大先輩がいます。

私は開業したてのころ、上述したような経営者に多く出会い、

もともと労働組合出身の私には不思議に思えました。

しかし、その先生からいただく年賀状には毎年の新たな目標と前年の結果が詳細に記されていました。

具体的な仕事上の目標に趣味の合唱やマラソンの結果までが具体的で

とても刺激と勉強になるうちに、私のマインドも変化しました。

労働力を提供するだけの労働者よりも

自らの創意工夫で厳しいビジネスの世界を切り拓いていく経営者は魅力的です。

業績を伸ばすためには従業員のモチベーションやスキルアップが欠かせず、

そうした経営者のパートナーとしての社会保険労務士はやりがいに満ちていると思います。

しかし、そこに至るまでのご苦労と自己研鑽は計り知れません。

社会保険労務士 資格を活かして新たな仕事を創りだす

団塊の世代の方で、資格を取って50歳前に大企業を退職された方がいます。

最近では企業のみならず、健保組合なども主催する「定年前準備講習」の専門家になっています。

「人生100年時代」と言われるようになる10年前から

今を見越した考え方と行動力をお持ちで成功されています。

ご自分が提唱されたように70歳までは社会保険労務士として講師などを精力的に勤められ、

70歳まで年金支給を繰り下げ、見事42%増額された年金を受給されています。

私がワークライフバランスコンサルタントになった理由

私も自分の生き方や実践と社会保険労務士の専門性を合わせた形で

ワークライフバランスコンサルタントとしての活動を始めました。

日本にワークライフバランスという言葉を紹介したのは

「会社人間が会社をつぶす ワークライフバランスの提案」

という朝日新聞社から2002年に出版された

パク・ジョアン・スクッチャさんの著書でした。

この言葉に出会った2003年に、私のミッションはコレだ!と思いました。

女性が働き続ける社会を願って労働組合に勤めたり

夫が育児休業法施行翌年の1993年に育児休業を4カ月取得し

「育児も男のカイショー」を出版するなど、夫婦で働き子育てすることを実践していたのです。

https://wlbc0601.com/typebeyu/

2006年の千代田区の講演には今やワークライフバランスと言えば

この方を置いてほかはない小室淑恵さんですが

産まれたばかりのお子さんをベビーカーに乗せて来てくださいました。

ワークライフバランスという言葉が知られるようになる前は

国家資格としての社会保険労務士であることが、信用力になりました。

その後は講演するうえでは「元」社会保険労務士で充分、

業として仕事をするわけではないので、登録は不要と考え、

つまり廃業届を社会保険労務士会に出して、毎年の会費96000円を節約しました。

現在は私の開業当時はなかった社会保険労務士法人の存在があります。

資格を活かした職場として勤めるのか

開業までの修行の場と考えるのかを念頭に入れて置きましょう。

どんな世界もピンキリ、中小企業の経営者もピンキリでしたが、

社会保険労務士法人がブラックだったという話しもありますのでご注意を。

学びは尊いけれど、資格取得後のビジョンを描き創ることを忘れずに

試験科目の各法律の内容とともに

労務管理とその他の労働に関する一般常識と社会保険に関する一般常識は

まさに「一般常識」として出来れば全ての社会人に

備えて欲しい知識です。

同時に、社会保険労務士を業として稼ぐことの難しさも

ご理解いただいたうえで乗り越えて

次世代の社会保険労務士像を構築していただければと思います。

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