「ミステリーと言う勿れ」というタイトルは単なる犯人捜しだけではなく、
様々なパラダイムシフト(価値観の転換)を主人公が説きます、
もちろんミステリーも解きます、それも今までになく、かなり面白いです。
さらに主人公もミステリアスです、という作者の意図をますます感じさせる、
絶対に観たくなる第二話の台詞をご紹介します。
「仕事は主体的に考えてこそ」という教え
第一話では、男社会に生きるヒロインを励ます台詞満載でしたが、
第二話では、「女だからを言い訳にしない」バランスが素晴らしいです。
情報はオープンなのに、自分の頭で考えることをしないのは男女限らずいただけません。
上司役の筒井道隆さんがいい感じです。
ちょっと前までは気弱な青年役が多かったのに、歳月を感じます。
何故、人を殺しではいけないか
よくある答えは
自分が殺されたくないから。人にされて嫌なことはしてはいけないという教え。
残された家族が悲しむから。
捕まるから、罪になるから ←捕まらなかったらやるのか
久能整君の答えは戦争や紛争写真がカットバックとともに、
いけないことはない。法律で決まっていることでもない。
罰則はあるが、人を殺してはいけないという法律はない。
いけなくはないが、ただ秩序のある平和で安定した社会を作るために便宜上そうなっているだけ。
人殺しなんてひとたび戦時下になればいきなりオッケーってことになるんです。
それどころがたくさん殺した方が褒められるって言う状態になる。
そんな二枚舌で語られるほど適当な話。実際に今、殺しまくっている場所が世界中にある。
以上をバスジャック犯人と乗客との緊迫感ある会話として繰り広げられます。
さらに、犯人がキレるところまで追い込まれる台詞が秀逸。
犯人キレる、からの展開の早いどんでん返しにビックリ、
後に偽悪的なだけとわかる振る舞いなど、
台詞に感心して考えていると、見逃してしまいます。録画必須です。
昨今の殺人犯の「心の闇」という意味不明な、使い古された言葉よりずーっと説得力があります。
また、一人を殺せば殺人犯、(戦争で)大勢を殺せば英雄ということはよく言われることですが、
久能君の例えはとても現代日本を生きる私たちには判りやすいものです。
かつて、若者向けのテレビ番組(確か、Eテレの「YOU」糸井重里氏司会)で
全く同様の「なぜ、人を殺してはいけないのか」という質問と討論があり、
そのことはセンセーショナルに報道されました。
確か、ノーベル文学賞受賞の大江健三郎氏が
「そんなことは考えるべくも、議論する必要もない」と断じ、妙に納得しました。
大江氏のヒューマニズムに傾倒していたこともあって。
しかし、今は、整君のほうにより説得力を感じます。
宮台真司氏が「法の奴隷」と言われる意味の理解が少し深まりました。
いじめてる側がこそが病んいると指摘
かつていじめられていた青年の言葉は重いです。
「あの頃は今みたいに逃げていいよって誰も言ってくれなかった。
逃げちゃ駄目だった。
学校も休めなかった。」
確かにそういう時代もあり、今のように多様な高校もありませんでした。
ただ、今でも周りの無理解で逃げることを許されず、
苦しんでいる子がたくさんいるのも現状かと思います。
それに対する久能君が説くのは
「どうしていじめられている方が逃げなきゃならないのでしょう。
欧米の一部ではいじめている方を病んでいると判断するそうです。」
理想的な情況を具体的に語る台詞には
多くの共感、驚き、目から鱗的な発見だったという感想が多く寄せられました。
実はこうした考え方はかなり以前から心ある人々の中では共有されている事実です。
それが実現しないのは、生徒間の同僚圧力や教師の責任逃れという体質があると思います。
テレビドラマを通じて広く知られた、この絶好の機会を
学校の中で活かすかどうかはひとりひとりの行動次第…。
馬鹿みたいにコツコツとする仕事こそ尊い
ヒッチハイクで大陸を旅することにした元彼から、
事務員の仕事を馬鹿にされた女性へ語りかける久能君の台詞は
「その元彼は筏でも作って大陸に行ったのですか。」で始まります。
忘れがちな事実を分かり易く教えてくれます。
そして最後に、
「その元彼が山奥で完全自給自足をやってる人でない限り、話を聞く必要はきっぱりないです。」の「きっぱり」が嬉しく響きました。
不妊治療と夫と姑の話しは終わり方が深かった
夫や姑から不妊治療を不自然なことと責められている女性へかける台詞は
「不自然なことですか。
いけないことですか。
人は自然の生き物なので人がすることはすべて自然の範疇だと思います。」
ここは、ちょっとエクスキューズも必要かなと思います。
生命科学の進歩は目覚ましく、社会科学や倫理もともに考える必要があるからです。
同時に、40年前の登場時には「試験管ベビー」と呼ばれた治療も
今やクラスに二人はいるのが現状です。
2019年に体外受精で生まれた子どもは過去最多の6万598人(日本産科婦人科学会)
厚生労働省の統計では19年の総出生数は86万5239人で、
14.3人に1人が体外受精で生まれています。
ほんの十年前にはクラスに一人と言われていました。
そして、2022年4月からは保険適用になる「不妊治療」が
不自然だというのは暴言でしょう。
ただ、最後に久能君は
「苦しいことを進めるために、より悪いことを望むのはまずいです。」
と語りかけますが、これはそれまで女性の口から聞いた夫や姑との関係を指すのだと思います。
さらに
「それがどうなっていくのかぼくは知っているので。」
という言葉は第一話でも垣間見えた
彼自身のここまでの人生というミステリーにも興味が繋がります。
怒ることを諦めている方々は是非
そして、最後に瑛太さん演じる人物の台詞に私は救われました。
「怒る」ことへのタブー観、ダサさが蔓延している気がするから。
怒ることを諦めている方々は是非、ご覧くださいませ。