「真犯人フラグ」はキャストに相応しく、人間が描けていて感動

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視聴率が最終回のみ二桁(12.4%)と「あなたの番です」よりかなり低かったことに驚きました。ゲームのように毎回殺人の連続で犯人にガッカリした「あな番」よりも、「真犯人フラグ」は人間を描き、希望があり、感動さえしました。バッドエンドとか、犯人の動機が希薄とは思えない理由を前半に書きました。後半は台詞と演者により完全ネタバレです。

犯行動機は納得の嫉妬の怖ろしさ

「この結末は納得できる、できない、どっち?」
に応えるなら「納得」です。

真犯人が嫉妬した二つの点は生きていく上で最重要なものではないでしょうか。

仕事の(以上に芸術的な)才能と人生の伴侶を取られたら、
自分に自信のあると思っている人間ほど妬みは膨らみます。

本物の自信や自己肯定感があれば陥らない闇ですが。

人生は思い通りにならず、日々の営みにこそ幸せが

犯人に一線を超えさせてしまったのは、日々の営みを大切にすることの幸せと強さでした。

以上を台詞で表現した高野水登氏の脚本は素晴らしいと思います。

「物語の作者が一番されたくないこと、自分の描いたものが他人に勝手に発表されること」

物語の最後の場面に呼び出されたことを「センスあるな~」と褒めるところ。

小説の「青黒い」が難読漢字で書かれ、色を表す漢字の繊細さを理解されて
「やっぱり、わかるか」と最高の笑顔。

「己の感と取材力に我ながら鳥肌が立ったね」

「あいつは優秀で使い勝手が良かったが、歯向かって来た時は本気で腹が立ったね」

「どうしてお前だよ、俺は絶対的に自信があった。小説でお前に負けた。でもお前は小説をやめた。
俺が何より欲しかったもので俺を潰してそれをあっさり捨てたんだよ。
しかもおまえ真帆ちゃんと結婚しやがった。
お前はまた俺がほしかったものを大した努力も苦労もなく、へらへら笑いながら奪っていく。」

「俺みたいな二律背反の悪役が必要だろ、物語には。
お前があきらめてそれこそ自殺でもしたら駄作になる。
助けてやったのは作品を盛り上げるための演出。
お前にはとうてい書けないような最高のノンフィクション小説を書くためにやったことだ。
完成したらぜひ評論してくれ」

「それは敗北宣言でいいな」

凌介の回想とボイスレコーダーの再生を開始する瞬間の残酷さ。

「今、踏ん切りがついた。悪いものを隠しているともっと悪い物が来る。」

「壊せるわけない。私は信じてる。私達家族はそんなに脆くない。
ご飯炊いてあるから、買い物して帰らなきゃ。冷蔵庫に何もなくて。

凌ちゃんと光莉と篤ちゃんと一緒にご飯食べたい」

この言葉に敗北して一線を超す真犯人。

「おれは真帆ちゃんにさ、最高の物語を手向けたかったんだよ。」

「ずっと寂しくて、なんか心細かった。でもなんでかな、真帆が一緒にいる感じがした。
思い出して、記憶を手がかりにしてなんだか一緒に真帆のことを探している気持ちだったんだよ。
それは目に見えなくても触れられなくてもそばにいるってことじゃないかな。

久しぶりに本を書こうと思ってる。
うん光と敦が毎日どう過ごしたかありのままに日記みたいな小説。
大きな事件は起らない、長いわりに同じような事の繰り返し。
一日一日を過ごす話なんだからだけど、最高の物語になるはずだ。
子どもたちが立派に成長するまで、最高の物語をかきあげるまで絶対に折れない。」

真犯人の涙の苦さ、複雑さ。


そして、まさかのぷろびん登場で事件終了。

犯人を挟んでの二択刑事の最後の晩餐の話し。

「決めたところで無意味なんだよ。
味覚も好みもある。人生全部自分の思いどうりってわけにはいかない。」
「それだとみんな最後の晩餐で後悔しながら死ぬってことになりません?」

「いや、毎日毎日何食っても、うめぇって言ってるやつは最後に笑うんだよ」

至言!であり、真帆の言葉と呼応しています。

「大丈夫です。何があっても乗り越えます。」

「そ、だから結局幸せにしかならない。」

豪華なキャスティングと演技で大満足

瑞穂が一線を超えずに済んだ、河村には憎しみの対象である亮介の笑顔を演じた西島秀俊さん。

「宮沢りえさんは不倫をする役は受けない」説もありましたが、
ツッコミどころもある行動には誰でも失敗することはあること、
それを上回る日々の営みや家族への強い信頼を表現されていました。

柄本時生さんが演じてなければ、ネット社会を描くためのとってつけたような
賑やかしに終わってしまいそうな役に存在感を与えていました。

しかも実際のYouTubeとドラマの中が一番シンクロしていたことも見事でした。

最後に、企画・原作の秋元康さんと脚本の高野水登さんの役割分担はどんな感じだったのでしょう。  

若き脚本家のこれからを期待しています。

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