映画「蘇る三大テノール 永遠の歌声」を2020年2月21日
吉祥寺アップリンクで鑑賞したところ、滂沱の涙…いつ以来だったでしょうか。
2月19日(金)NHK朝の情報番組「あさイチ」の映画コーナーの紹介はいまイチでした。
番組での紹介を視てもその気になっていない夫にも観て良かったと感謝されました。
白血病からの復活劇、
サッカーW杯とオペラスターのコラボ、
イタリアの歴史の凄さ、
アメリカショービズの巨大さ、
それらが誰にも三大テノールの魅力が伝わる選曲とともに描かれた
あっという間の94分でした。
白血病を克服したカレーラスの復活 最初に歌う場面で涙が溢れ
初めての打合せのために集まったホテルのエレベーターが開き、
廊下を4人が一緒に歩くだけで感じられる圧倒的なオーラから映画は始まります。
今から30年前はこうだった…ということをいろいろと思い出させてくれました。
まだ白血病が不治の病と思われていた時代に、
アメリカで当時最先端の治療をカレーラスは受けたのでした。
生き長らえることだけでも難しい中、歌手としての復活は奇跡的なことでした。
数日前に大腸ポリープの切除と検査をし、
良性とはいうものの癌化の可能性がある「腺腫」と判明。
母を大腸ガンで亡くしている私にとってはショックなことでした。
生きていくことへの緊張感が高まっていたためか、
カレーラスの復活劇と歌詞の内容が刺さりました。
病が自分ごとや身近にいる方にとっては勇気を与えてくれる歌声です。
イタリアの歴史の凄さ、W杯決勝前夜祭ゆえの困難と高揚
舞台は歴史ある劇場、なんと古代ローマ、216年に建設されたカラカラ浴場です。
日本は弥生時代であり、漫画と映画でお馴染み「テルマエ・ロマエ」の時代です。
サッカーとオベラのコラボという最高の舞台ながら、
ワールドカップ決勝前夜祭ならではの困難もありました。
全世界に中継される奇跡の三大テノールの共演ながら、
テレビクルーのベストメンバーは翌日の決勝戦中継担当です。
30年前ですから、サッカー中継も今のような高度な映像機材はなく、
腕がものを言ったのでしょう。
それでも劇場チームは最高の映像を8億人に届けました。
90年のワールドカップの映像には2020年11月25日に亡くなったばかりの
マラドーナの雄姿もあります。
有名な「神の手」ゴールと「5人抜き」ドリブルを披露した1986年の優勝の次のワールドカップです。
90年というのはJリーグ発足の3年前、
日本は94年大会も「ドーハの悲劇」で出場出きていない時代でした。
国中が盛り上がる今とは隔世の感があります。
ですから、新婚旅行先にこのワールドカップを選んだ
明石家さんまさんのサッカー通ぶりは突出していました。
大竹しのぶさんには理解されない行き先だったと当時から嘆いました。
私たちが未だあまり知らなかったワールドカップの時代を垣間見ることもできました。
驚いたことに、三大テノールがそれぞれに贔屓のチームがあり
支援している映像が新鮮でした。
誰がどのチームのファンかは観てのお楽しみに。
白血病から蘇ったカレーラスへの友情とサッカー愛の融合が産んだ奇跡のコンサートには
チャリティー目的もありました。
アメリカのショービジネスの巨額さ、巧みさ
当事者さえ想像しなかった大成功を収めた一度限りの軌跡の共演を
アメリカのショービジネス関係者は見逃しませんでした。
その前に、映画の最初の頃三大テノールの関係を説明するのに
年齢とともにMETでのデビュー年で語られることにも驚きました。
もちろん「メトロポリタン歌劇場」はオペラの聖地ですが、
ヨーロッパの有名オベラハウスではなく「アメリカ」のMETとは…
巨大ビジネス化する「三大テノール」の危うかった一面と
世界ツアーを成功させていく物語も秀逸です。
よく知られたアリアだけでなく、世界各地の音楽を聴かせるには
編曲を担ったラロ・シフリンの存在が欠かせませんでした。
「燃えよドラゴン」や「スパイ大作戦シリーズ」という
多くの人の耳に残っている作品に参加していました。
「マイウエイ」をあの声で聴くと…
シナトラのスタンディングオベーションに当の3人も感激しているシーンにはこちらも感激。
各公演の観客席にはVIPの姿、日本公演の様子も映像にはあり、
著名人や高貴な身分の方が喝采する姿も…
来日公演はいつも大きな話題でした。
クラシックを年に数度聴きに行く程度の私たち夫婦にとって
オペラ公演は敷居が高く、三大テノールは行ってみたい公演でしたが、
チケットが高く行けなかった思い出があります。
NHK「あさイチ」映画コーナーでは伝わり切れていなかった魅力
「あさイチ」では
「1990年代世界中で大旋風を巻き起こした三大テノールの未公開映像も交えながら構成」
「本人や関係者のインタビューを交えながら結成の過程やステージの裏側を描き出す」
って2回も「交えて」…
「はじめはそれぞれの個性が強く打ち解けられなかったという3人の関係も語られています」
と言うも、それは冒頭の一瞬でたちまち打ち解けたという映像があるのですが…
映像ではカレーラスの語りの字幕が「アリアを聴いて」となっているけれど、
彼は「true aria」と言っているので本物とか、本当のと訳さないと
発言意図が違ってしまう…これは映画の字幕がそうなのかもしれませんが…
「(オペラや三大テノール)好きな方はもちろんなのですが、
未公開映像もたくさん入っていますのでおすすめ」とのまとめ
…未公開映像も2回目…既に映像化されているから強調ポイントなのかもしれないけれど、
圧倒的に映像作品を観てない視聴者が多いと思うのですが。
映画好きだから映画コーナーを担当している小林孝司アナウンサーは、
NHKアナウンサーの殻を少し破ってもいいのではないかしら。
今、この記事を書くためにプログラムを読んでいると感動が蘇り震えてしまいました。
田尾下哲氏の言葉
「舞台裏を追った映画でありながら、
訴えかけてくるのはやはり音楽であり、
3人の個性、そして唯一無二の歌声だ」