敬老の日を前に100分de名著「老い」ボーヴォワール 上野千鶴子解説を読む

人生100年時代
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文明社会でありながら、老いた人間を厄介者にして廃物扱いする。

そのように老人を扱うことが文明の「言語同断な事実」スキャンダルであると
ボーヴォワールはきっぱりと言っています。

少子高齢化社会をTECで解決可能な時代が来たからこそ  
老いの現実に向かう人間だけでなく、
若い人々にこそ読んでいただきたいと思います。

社会をより進歩させ、誰でも未来に希望をもって生きていけるようにするために。

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加齢をいう現象は、すべての人が中途障害者になること


ボーヴォワールは「第二の性」で20世紀後半のフェミニズムに大きな影響を与えた人ですが
彼女を貫いている「当事者性」がこの「老い」でお顕著に発揮されており
私はこの点がとても好きです。

この本でボーヴォワールは、老いを多角的に考察しています。なかでもいちばんの読みどころは、歴史も社会も個人もが、老いをいかにネガティブい扱って来たかを事例やデータをもとに示しながら、それがいかに不当なことであるかをこれでもかとかいているところです。

彼女は序文でこう宣言しています。

「しかし、ごまかすのはやめよう。われわれの人生の意味は、われわれを待ち受けている未来のなかで決定されるのだ。われわれがいかなる者となるかを知らないならば、われわれは自分が何者であるかを知らないのだ。(中略)われわれは老齢の不幸を無関心に是認しなくなるであろう」

五章で紹介されるゲーテの「老齢はわれわれを不意に捉える」は
もう何十年も前から林真理子さんが「階段を下りるように突然気づく」

表現されていることを思い出しました。

高齢者の否定的アイデンティティは、実は差別意識とも関係しています
と上野千鶴子さんは次のように述べており
「加齢をいう現象は、すべての人が中途障害者になることだ」まったく同感です。


私は障碍者問題を自分ごとと考えなければと思うのはやがて来る自分を想定しているからです。

そして、現場に足を運び、老いの現実をたくさん見て来た上野さんは
「老いは衰えではありますが、だからといってみじめではありません。
老いをみじめにするのは、そう取り扱う社会の側です。」と述べます。

老いや死に方を見せてくれることの大切さ

私は、知識人が認知症になったり半身麻痺になったり知的能力が衰えたりしたときに、公の場からその人を消して、社会的な透明人間にするのはやめてほしいと考えています。社会に対して情報発信をしてきた人間には、それを続ける責任がある。人はこうやって坂を下りていくのだということを見せてほしい思います。

2021年7月23日の東京オリンピック開会式に
聖火ランナーとして登場した長嶋茂雄氏を思いました。

「痛々しい」と感じた方もいたようですが、
普段賛同することが少ないテリー伊藤氏がもっと長い間見せるべきだと
テレビ番組で発言していたのはこのような意図であったかと思います。


核家族化が進んだ中で育ってきた私たちも親を送る年齢になる中
数年間母親を介護をした友人が親は最後までいろいろ教えてくれるものだ
老いや死に方を見せてくれたと言っていました。

私は両親を30代で亡くし、母の享年を超えた数年前に
モデル無き老いということを感じました。

性について語る際に、「本能」と「自然」という言葉は禁句

フーコーがセックス(生物的)とセクシュアリティ(心理・社会的)を分けて、
セクシュアリティは文化と歴史の産物であると論じ、
性は自然科学ではなく、人文社会科学の研究対象に変わり、
性について語る際に、「本能」と「自然」という言葉は禁句となったそうです。

「老いと性」については番組の第三回で伊集院光氏が
自分ごととして捉えていく様に上野千鶴子氏も喝采を送っていました。

毎回のことですが、伊集院氏と解説者の会話が素晴らしく
テキストでは伝わり切れない面白さがあります。

名著111「老い」
「100分 de 名著」の番組公式サイトです。誰もが一度は読みたいと思いながらも、なかなか手に取ることができない古今東西の「名著」を、25分×4回、つまり100分で読み解く新番組です。

武田砂鉄氏の「マチズモを削り取れ」を読んでいると、
世間的、とくにジェンダーギャップの点では
未だに本能や自然が幅をきかせていることに驚きます。

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ボーヴォワールが投げかけた文明社会は高齢者をどう処遇するのかは、
私たちすべての未来に関わっています。

自分の老いを個人的な努力で抗おうとするのではなく、
もっと大きな、文明史的課題として捉えることの重要さを教えてくれています。

認知症高齢者と死の自己決定について

自己決定ができなくなってまでいきていたくないという高齢者が増えて来ているそうです。

生まれることに自己決定は一切ありません。

せめて死の自己決定くらいさせてほしいという考えの先に安楽死問題があります。

死についての完全に自由な意思決定は可能かどうか、
突き詰めて考えるとそれは難しいのではないでしょうか。

認知症の人が自ら死を望むことはほぼあり得ないそうです。

となると、認知症になる前の自己決定が将来の自分を拘束することになります。

役に立たなくなっても生きていい

ボーヴォワールは「私は若い人びとが好きだ。
私は彼らのなかにわれわれの種(人類)が継続すること
そして人類がよりよい時代をもつことを望む。
この希望がなければ、私はそれい向かって進んでいる老いは、
私にはまったく耐え難いものと思われるだろう。」と言い

バーバラ・マクドナルドは
「高齢者だって、70歳、80歳、90歳がどんなものか発見する過程にいる」

だから上野さんは、役に立たなくなっても、
認知症になることを含めて生きていいと締めくくります。

「子どもをもちたいとけっしてねがわなかったこの女性が世界中の何百万の娘たちの精神的な母であることはなんとう矛盾であり、なんという勝利であることか」ボーヴォワール=ある恋の物語 福井美津子訳「訳者あとがき」

と上野さんが引用された言葉に感動で震えました。

そしてボーヴォワールは老いという冒険に立ち向かう勇気まで残してくれています。

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