SNSのなりすましが仕掛ける「おれではない炎上」(ネタバレ無し)

読書学び
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「SNSの炎上」と「なりすまし」が仕掛けのミステリーには興味津々。

しかも、浅倉秋成氏の作品とくれば。

本屋大賞にノミネートされた前作「6人の嘘つきな大学生」を一気読み、
伏線やミスリードでやられた感満載、しかも心温まる物語に魅了されたので迷わず購入。

日本語としてやや馴染まないタイトルも読めば納得の、これしかないタイトルです。

SNSの炎上や「なりすまし」など誰の身にも起きる可能性はある

一言でいえば前作を裏切らない傑作でした。

主人公が犯人に仕立てられるツールがTwitterですから、
ツイ民のはしくれとしては興味津々、炎上やなりすましの恐怖は他人事ではありません。

「女子大生殺害犯」として実名、写真付きで晒され、
そのアカウントが実に巧妙で見れば見るほど主人公のものとしか思えず、
会社も友人も家族からも無実を信じてもらえない地獄の逃避行…

と、言っても記載されている日時を見るとそう長くはない…読む側としては。

延々と逃避行を続ける物語ではないのだけれど、
Twitterの拡散速度とともに、局面が刻々と変わる疾走感があるので
読む手を止めることが出来ませんでした。

RTの怖さや、中に挟み込まれるTwitterの文面やアカウント名にもあるある感が満載‼

YouTuberの負の側面も描かれますが、それで終わらないのが浅倉秋成さんの作品の素敵なところです。

私が「6人の嘘つきな大学生」を読んで浅倉さんのファンになった点は、
小説としての「仕掛け」でどんでん返しを演出しながらも、
現実でも一つの事象には様々な見方や感じ方があることを思い知らせてくれるところです。

本作ではそれが他人との間でだけではなく、家族の中でも展開されているところが注目点です

終盤次のような文章があります。

現れた警察はさすがに事態を把握しかねているようだった

まさに、読者も一瞬、このような状態に。

取り調べや登場人物たちの会話によって真相がわかる仕掛けですが、
その「真相」がたくさんあるのです。

普通「アレはどういうことなのか」とか
「真相は何だ」と読み手が知りたいことを教えてくれるのが言わば解決編でしょう。

ところが、疑問に思っていなかったことにも仕掛けがいろいろあり、

マジ面白い、作者にやられた!感が興奮に変わります。

そして、女子大生殺害事件の犯人にさえ、なるほどと思わされ、
優しさを残しているところに、作者である朝倉秋成氏の優しさを感じました。

タイプ別のおススメのポイント

本書をおススメするのは

一気読みできる面白い本が読みたい方

活字はネット記事やせいぜいビジネス書が中心だと、ふと小説が読みたくなりませんか。

一冊読みきることが少し億劫になってしまっている方でも、
一息に読める面白さで、読み切った満足感が得られます。

それでいて自分を振り返る貴重な体験もどこかにはあるほど、万人向けの内容です。

もちろん、TwitterなどSNSに不案内な方でも、むしろそうした方のほうが
Twitterをやっていない主人公に寄り添えるかもしれません。

主人公と同じような50代既婚男性

怖くてハラハラドキドキのサスペンスです。

そして、最後には主人公の台詞と同じようにきっと思うのではないでしょうか。

人生100年時代の折り返し地点で、過去を振り返り、未来を考えるための一助になると思います。

主人公の妻のようなモヤモヤを抱えている女性

とても多くの人数がいるらしい、モヤモヤしている既婚女性にとって、
共感や気づきの多い小説だと感じました。

一方で、最もリーチしづらい、タイトル含め手に取ってもらいにくい層であることが残念です。

解決策としては、家族での回し読みでしょうか。

登場人物と同じ若い世代が察して母親に薦めてみる、
夫が口にはできない反省の意味を込めて何気なく薦めるなど。

Z世代はじめ若い方も感情移入できる

Z世代にもたぶん違和感のない、その上の世代でも似たような経験や気持ちに共感できるかと。

特にカバーを外した表1,表4は本文中にもあるとはいえ、
Twitter感はこの形だとあるある感が増します。
(境界線が無いようで実はあるTwitter界ゆえ、60代の私のTLでリアルに見ることはありませんが)

小中学生をお持ちの方にとっては他人事とは思えない

まさに悩みのタネである、ネットリテラシーをどう教えるかの心構えのヒントがあります。

すべての凡人と、ルサンチマンに

凡人には登場人物を通して中後半でたびたび、心を覗かれているような気持に。

ルサンチマンという言葉は作品中にはなく、描写も極僅か(なので、読みやすいです)ですが、
実は強烈に刺さるのではないでしょうか。

まるで、凡人とルサンチマンの間にある防衛装置が本作の主題のように思えました。

ルサンチマン - Wikipedia


つまり、老若男女が楽しめ、ラストには気持ちが晴れる作品です。

読むときのポイント、心構えなどのお節介

レヴューで、やや前半が…という意見を見ましたが、
とてもたくさんの伏線になっていることが驚きです。

目次が無く、章立ては登場人物ごとになっています。

シーンごとに登場人物名がついていて、下段のページ横にその登場人物がついています。

何やら不思議な、むしろ目次を眺めるのが好きな私としては、
不親切にさえ思える作りになっています。

ところが、終盤になるとその登場人物名を辿って前を読み返したくなります。

破綻は無いとわかりながらも確かめたくなるので、実に親切な、自信にあふれた作りなのでした。

一切無駄なことがない爽快感‼だからまったく退屈せずに一気読み

どんでん返しの連続であることは前述の通りなのですが、
その中でも章終わりやページをめくったとたんの人間関係や内面のどんでん返しには、
「えっ⁉」と思わず声を出してしまうときもありました。

いくつもあるのですが、読み手によってゾッとしたり(私です😅)、
よくぞ言ってくれたと共感したり、自分の奥底の気持ちを気づかされたり
人物描写も味わい深いものがあります。


一度目は兎にも角にも先が知りたくて、けれども伏線回収をしっかり味わいながらの一気読みでした。

しかし、こうして二度目に目を通してみると、
登場人物の独白がとても深いことにあらためて気がつきます。

ちょっとだけ自慢すると、
家族の在り方や想いを仕事としてきた私は一つだけ疑問に感じる点がありました。
ま、結局はなーるほど‼
と思わされ、疑問は見事に解消されるのですけれど。

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