映画「素晴らしき世界」感想 西川美和監督×役所広司は想像以上

映画ドラマ
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役所広司のための作品と言って良いほど、主人公にフォーカスした潔い脚本

役所広司さんのための作品と言って良いほど、
主人公にフォーカスした潔い脚本・演出ながら余韻の素晴らしさ。

「ジョーカー」は悪に昇っていく、本作は普通に戻ろうとする違いはあっても、
主人公の自分自身と社会との葛藤が見事に表現されていました。

BOSSのCMをみたとき、なぜ役所広司さんがこの役を?と思い、
映画の内容を知って合点がいき、
見終わったあとは「三上さん、頑張ってるな」と嬉しく、
懐かしむような気持になっています。
タイアップ?として秀逸とうか、その後あちこちで
作業着で働く役所さんをみかける…。

言葉では伝えきれない「観て」「感じる」しかない逸品

社会に押し潰され、悪の化身へと変貌する『ジョーカー』(2019年)で主演を務め、
アカデミー賞他多くの賞を獲得したホアキン・フェニックスの演技を彷彿とさせる
役所広司氏の演技でした。

著名人からの素晴らしいコメントを読んでも、
この作品を「観る」こと以上には伝わっていない気がします。

言葉の持つ力を信じ、文章大好き人間の私でも、
言葉で表現することの限界と虚しさを感じるような作品でした。
「観て」「感じる」しかないような。

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「社会の複雑さに堪えるということ」の普遍性

ただ、この作品が語られる中で
「社会の複雑さ」という言葉に何度か出会います。

それは、私が大好きな言葉で
「社会の複雑さに堪えるということ」と
ご著書「橋をかける」に書かれているのが美智子上皇后なのです。

まさに対極の環境の中にあっても
「生きていくこと」の共通項には息を吞む思いがします。

設定されている主人公の年齢は一歳違いなので、同じ時代を生てきたことになります。

夫と、たまたま今の(あるいは亡くなった)親のもとに
生まれたことを感謝してしまいました。

お互いの実家ともにそれなりの波乱はあってもです。

私自身、直情的で決して穏やかな性格ではないのですが、
犯罪とは無縁で生きてこられたのは
育った環境に負うところが多いことがわかりました。

様々な表現活動によって心救われてきたことを思い出させてくれる

同時に、日常の中で感情を噛みしめたり、
表現したりすることの重要性、
とりわけ映画、演劇、音楽、絵画といった「不要不急」
と、昨年から繰り返された言葉を使おうとして愕然としました。

緊急事態下に「不急」はあっても「不要」とは誰が言い出したのか。

誰が誰に対して「不要」と言えるのか、急に怒りを感じてしまいました。

様々な表現活動に触れることによって、
単なる「楽しみ」を超えて「心救われていた」2019年以前を思いました。

行けないと渇望するほどではなくても、
芝居や落語、コンサートにどれほど癒されていたのでしょう。

医療や命と経済の両輪という言い方をよくされてきましたが、
「心」も入れたトライアングルで考えるべき時ではないでしょうか。

すでに最初の緊急事態宣言から子どもたちをはじめ
DV問題がより顕在化したことは知られています。

しかし、今生活や環境に大きな変化が無かった人々への
じわじわとした危機が言動や行動に表れ始めているようです。

監督は社会的問題点を声高に示すことなく、
会話の中や本の表紙を映すだけで示唆していました。

主人公の生きづらさを時間の経過という
浦島太郎状態にはあまり触れずに、
普遍的な「社会の成り立ち」に重点をおいていることが
多くの人の胸に響く要因だと思います。

主人公に関わった人々の姿や言葉に消極的な共感を覚える

フォーカスされているのは主人公なのですが、
彼にかける周りの人間の言葉に、
そうなんだよな、仕方ないんだよ、俺も我慢してるよ、やり過ごしているよと
積極的ではない、消極的な共感を覚えます。

塀の中とシャバの違いを表現する台詞とラストカットの素晴らしさに、
重い映画ながら終演後に歩き出す気持ちになれました。

(ココ、監督と六角精児さんの対談読む前に書きました!)

パンフレットが売り切れいているというのも初体験でした。

きっと三上さんを抱きしめるように、
表紙を抱きながら帰路につかれた方が多くいたのでしょう。

パンフレットは注文しました。

下記で観ることができますので、疲れた心に何かが注がれると思います。

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