夫の育児休業取得はボウリングの一番ピンの訳 役割分担より交代を

ワークライフバランス
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産む側の女性は選択の余地なく産前産後休暇合わせて14週間、約4か月仕事を休まざるをえません。

それまでも、つわりに苦しみながらだんだん大きくなるお腹を抱えての仕事は大変です。

それを考えれば、夫が4か月程度の育児休業を取ることは自然なことではないでしょうか。

会社の仕事の代わりはいくらでもいますが、夫や父親は唯一無二の存在なのです。

休業中でも手取り額の8割が保障される世界に誇れる「制度」があるのです

「男と女では仕事に対する責任や思いが違う」などと考えるのは
男性の思い上がりにほかなりません。

そんな男性には妊婦体験でもさせたいですね。

自民・男性議員3人が妊婦体験 「息も絶え絶え」、政策参考に | 共同通信
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会社の仕事の代わりはいくらでもいますが、夫や父親は唯一無二の存在なのです。

「自分がいなければ仕事は回らない」というのは思い込みです。

というと元も子もないので、ここではマジックを見るときの状態を思い出してください。

みごとなテーブル・マジックなどには本当に驚かされることがありますが、
ミスター・マリックのハンドパワーでさえ、誰も魔法だとは思っていません。

タネも仕掛けもあることを知っているからです。

かといって、タネも仕掛けもあるのだからと驚かない人もいないのではないでしょうか。

マジックを楽しめるのは、主観的に驚きながら客観的な理性が統合されているからです。

仕事に対しても、一見矛盾した考えを持ちましょう。

自分がやらなければ」と主体的に取り組むけれども、
「自分がいなくても仕事は進む、会社は回っていく」ということを忘れないでほしいのです

次のような私の投稿が掲載されて28年も経ちました。

朝日新聞「ひととき」欄(1993年11月4日)

        夫婦交代で育児休業

杉並区 武部純子  団体職員・三十四歳  

 育休の無かった十年前、生後八週の長女を一時間半かけて職場保育所へ連れて行きました。

今年4月に生まれた長男は私が2か月半、
交替して夫がただ今4か月間の育休をとって育てています。

 育児休業中は夫婦ともにまったく同じ症状が現れました。

■息子の日ごとの成長に目をみはり、唯一の生きがいとなり育児は尊い仕事だとつくづく感じる

■料理のレパートリーが増える

■テレビがお友達でチェックが異常に厳しくなる

■長女に対して口うるさく、ヒステリックになり後悔する

■夫(妻)が仕事でイキイキしているとわけもなくイライラする 

■習いごと、通信教育、はては井戸端会議に関心を持ちその必要性を感じる

■とは思いつつも一日にメリハリが無くアッというまに夕方になってしまい、自己嫌悪に陥る 

■必要とする情報の種類が変わったために使っている脳の場所が変わってしまったかのように、新聞の本文よりチラシ広告に興味を持ちよく読むようになる――。

 短い期間の経験ですが子育てに専念している女性の大変さを味わうことが出来、
男も女も人間としてそう違いはなく、
その時担っている役割によって気持ちが変わるものだと気付きました。

 双方の職場の理解と協力に感謝するとともに、
祖母や母の時代の苦労の上にある、社会の進歩を感じます。

当時には考えられなかった多様なライフスタイルを男も女も選び、
人間らしく生きることが出来るようになってきました。

職場復帰後、仕事と職場の人たちに、今まで以上に愛着を感じています。            


夫が育児休業を取ることの最大のメリットは、
このように完全に立場を入れ替えることによって共通の認識が生まれることです。

男と女、夫と妻、立場が違えば見えること、感じることは違うのが当たり前です。

相手を思いやること、相手の立場を想像することで共通の認識ができればいいのですが、
お互いに忙しい共働き夫婦になかなかそこまでの余裕はありません。

男性が育児休業を取ることは1992年に施行された
「育児・介護休業法」により認められるようになりました。

それ以前は、教師と看護婦や保母(当時)などの
限られた職業の女性だけに育児休業が認められていました。

しかし、国際世論や出生率の低下という国内事情のもとに、
男女を問わずすべての職種で育児休業が制度化されたのです。

つまりもう30年以上近く前から男性の育児休業は法律で保障されているのです。

しかも法改正を重ね、社会保険料の免除や育児休業給付金によって
休業中でも手取り額は8割が保障されるようになりました。

この内容は世界的に誇れる「制度」であることが認められています。

こんなチャンス生かさないのはもったいないと思いませんか。

そこで、思い切って役割を交代するのです。身をもって経験することができます。

このことを、勝間和代氏は
パパの育児休業は男性のワーク・ライフ・バランスにつながるボウリングの一番ピンと語っています。

経験者から見ても、さすがの表現です。

家事のひとつひとつ、育児のあれやこれやを少しずつ、
お手伝い、協力、参加、任せられるまでになり、家事・育児の大変さを知るに至るまでには
お互いに気を遣い、時間もかかります。

しかし、夫が育児休業を取得するとなれば、夫も主体的にならざるをえず、
一気に役割交代が完成させなければならなくなります。

それは、一番ピンに球があたって気持ち良いくらいに
バタバタとピンが倒れていくように夫は家事・育児のスキルを獲得していきます。

夫婦が同じように家事・育児が出来るメリットは計り知れません


1 負担は半分、余裕があるから喜びは2倍に

2 子供にとっては、朝晩、休日の、親からの異なった関わりが2倍、刺激が2倍。

  早期教育のお教室に週2時間通うよりもずっと有効な刺激で優秀な子に

3 わが子の可愛さは二十歳すぎても同じ、しかし見かけやしぐさからは
  かわいらしさが消えるのが成長です。

  かわいかったころの思い出を語り合えるのはともに子育てをした夫、
  その宝物のような思い出語りをできる相手との熟年離婚はあり得ません。

 

さて、計り知れないメリットがあるにもかかわらず、
法律で保障されて30年近くも経つのに、男性の育児休業が当たり前の社会にはほど遠く、
取得率も増えないのはなぜでしょうか。

新しくできた『パパ休暇』「育休パパプラス」

こうした現状を変えるために、2010年6月に育児・介護休業法が改正されました。

新しくなった点は、父親が妻の出産後八週間以内に育児休業を取得した場合には、
再度、育児休業を取得することができる「パパ休暇」の創設です。

この産後八週間以内の育児休業は父親だけに認められた権利であり、
厚生労働省では「パパ休暇」と呼んでいます。

産後は、三週間後に床上げするように、
まず母体の回復を待たなければならないのですが、これは里帰り出産でもしない限り無理です。

退院後から、二~三時間置きの授乳におむつ替えに沐浴などの新生児の世話と
家事をしなければならない新米ママの救世主に夫がなるためのパパ休暇です。

改正前の法律では、母親が専業主婦の場合は労使協定で
父親の育児休業を認めないことができましたが、この規定がなくなりました。

したがって、妻が専業主婦の場合でも父親は育児休業を取得できるのです。

法律では父親が育児休業を取得した場合は、
原則一年の休業に二か月をプラスでき、これを「育休パパプラス」と呼んでいます。

里帰り出産は、パパの出番がなく、
父親としての自覚を持つ機会が遅れてしまうというデメリットがあります。

新米ママにとっても、天国の実家から一気に家事と育児を背負うことになるのは
ギャップがありすぎて大変です。

ママの産後休暇中に「パパ休暇」をとれるなんて、夢のように貴重な経験です。

特に、第二子、第三子の出産の場合は里帰りも困難となります。

パパ休暇」を利用すれば上の子も毎日パパと一緒に居られるのです。

子どもたちにとっても毎日が楽しく、弟や妹の誕生もいっそうの喜びとなるでしょう。

「育児休業期間中でも収入の8割は保障されています」

男性の育児休業の最大のネックは経済的な問題でしょう。

会社からの給与はなくても、雇用保険に加入していれば
育児休業給付金が取得月の給与の67%支給され、
健康保険と厚生年金の掛金は免除ですから、実質8割の収入が保障されるのです。

このことを出産・育児を遠い先のことと思う男女や
こんな制度は全くなかった祖父母世代など、すべての方々に知っていただき、
もっと育児休業のとり易い社会になって欲しいと思います。

それでも、夫婦共働きの現状としては、
夫よりも賃金が低いからという理由で妻が育児休業をとるケースがほとんどです。

何年もかかる仕事と子育てを、夫婦で協力していくための先行投資だった

20年前に私が、夫の育児休業の話をするといつも必ず、夫のほうが収入は少ないのかと聞かれました。

そのような理由でもなければ、当時は育児休業給付金や社会保険料の免除もなく
持ち出しになる状況だったので、育児休業を夫が取るメリットがない
と思われての質問だったのです。

そんな時、私はいつも
「これから先、何年もかかる仕事と子育てを、夫婦で協力していくための先行投資
と答えました。

夫が育児を「手伝う」から「主体的に関わる」ようになるための先行投資でしたが、
十分すぎるリターンがありました。

このように男性が育児を「手伝う」から「主体的に関わる」ようになるために、
夫の育児休業取得はとても有効な手段となります。

しかし、その時の妻の振る舞いによっては効果が半減する以上に、
お互いに溝を深めることにもなりかねません。

「自分が辛かったことは、相手も辛いだろう」と思いやる気持ちが重要

せっかくの育休を有意義にするために、
ここでは妻がおちいりがちな失敗について考えてみたいと思います。

育児休業を取得中の夫がヘロヘロになってしまった例があります。

夫の育児休業をいいことに、妻は仕事に没頭し、
夫から「妻が帰ってこないんです~」と泣きが入ったのです。

私には妻の羽が生えたような気持ちも理解できます。

ある日を境に育児休業に入る夫と違い、産む性である妻は、
最短である産後休暇明けに職場復帰したとしても、
十か月も前から日々変わる体調にとまどいながら仕事をし、
産前休暇六週間、産後休暇八週間は休まざるを得なかったのですから。

数か月の育児休業をとっていれば、久しぶりの職場復帰です。

休んでいたぶんを取り戻すべく仕事に精を出すのは当然なのです。

しかし、それでは夫婦が協力していかなければならないこれからの子育てにとって、
なんのプラスにもなりません。

ただ物理的に、どちらが子育てをするかという問題になってしまいます。

妻もまた、「自分が辛かったことは、相手も辛いだろう」と思いやる気持ちが重要です。

それぞれの立場をより深く理解し、思いやりを育てるのでなくては、
交代で育児休業を取得する意味がありません。

「自称」ではない真のイクメンとは「自分より子どもを優先できる人」

厚生労働省が、男性の子育て参加や育児休業取得の促進等を目的とした
「イクメンプロジェクト」を、父の日(6月20日)に先立ち、2010年6月17日より始動しました。

育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト
イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと。または、将来そんな人生を送ろうと考えている男性のこと。イクメンがもっと多くなれば、妻である女性の生き方が、子どもたちの可能性が、家族のあり方が大きく変わっていくはず。そして社会全体も、もっと豊かに成長していくはずです。

 「イクメン」という言葉が流行語大賞を取ってはや10年が過ぎ
「自称イクメン」も増える中で真の定義は、
「自分より子どもを優先できる人」がママ友の結論でした。

いわく、赤ちゃんを抱っこしている男性が増えてきて、
イクメンってカッコイイから外出時は抱くけれど、
機嫌が悪くなるとママに押し付けるのが「自称イクメン」。

子どもに好かれている、たくさん遊んであげるのがイクメンだからと、
夜寝付いた子を起こす、寝付く間際に帰ってきて興奮させ結果夜ふかしさせる。

余裕があるときだけ家事・育児に手をだしたがり、肝心な時には役に立たない。

まだまだ、
自己実現や出世がかかる仕事優先で精一杯頑張っているのだから家は俺が休むところ、
妻や子にとっても心休まる家庭でなくてはならないということを忘れ、父親でさえない。

仕事優先ならまだしも、休みの日は仕事の疲れを癒すためと称して
自分の趣味や遊びに精を出すような男性がまだいるのも現実ですが…。

要するに自分中心、自分の気分や気持ちが一番大事だった時代から抜け出し、
もう一歩成長することが親になることです。

育児は育自とも言われるゆえんです。

このことは男女に関わらず、本ものの「大人」「親」に当てはまることではないでしょうか。


例えば、キラキラネームも子どもの立場になるとちょっといかがなものかということもありますね。

一見子どものためにと優先しているようで、実は自分の思いどおりしたいだけ、
自分の身代わりにしてしまう過干渉な親も根は同じではないでしょうか。

20年以上前に、朝日新聞で育児休業を取得した男性のリレーコラムがありました。

どの男性も己を客観視することができ、ユーモアのある様など、
どことなく我が夫との共通点を感じました。

自己中心的ではなく、相手を思いやることのできる余裕を持って欲しいものですね。

熟年夫婦になってもお互いを尊重することの大切さ

最後に、熟年夫婦になってもお互いを尊重することの大切さを感じるエピソードを紹介します。

これも新聞の投書ですが、お互いの仕事を思いやることの大切さを教えてくれる一文がありました。

59歳の会社員の女性が、通勤時間30分の職場から
片道一時間半かかる職場への転勤辞令を受けました。

退職しようか迷っている女性に対し、夫は
「やるだけやってみたら?僕が協力するから」と背中を押してくれそうです。

仕事内容も難しくなり、自信を失いかけたのですが、
それでも女性が逃げ出さなかったのは、
それまで転勤をくり返してきた夫の苦労を初めて理解できからだといいます。

帰宅の遅くなる彼女に代わって夕食作りもしてくれる夫に彼女はとても感謝しています。

もし夫が、通勤時間が往復二時間も長くなる妻が、
家事をおろそかになることを懸念し、
「妻として家のことをきちんとやれるならいいけど」などと難色を示していたら、
彼女は退職を選んだことでしょう。

そうすれば、難度の高い仕事から逃げたことを後悔し、
夫の転勤の苦労も知らずじまいだったかもしれないというのです。

やがて訪れる定年後にも、二人の上には穏やかで心地良い時間が流れていくことが想像できますね。

2020年12月31日朝日新聞の「声欄70周年」を記念する記事の取材を受けました。

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