芥川賞作品「コンビニ人間」のレビューが主人公二人に激似 村田紗耶香の凄さ

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アマゾンのレビューを見て驚いたのは、
とても高く評価している人と酷く低い評価している人が
本作の主人公と彼女に深く関わる男に瓜二つなことです。

芥川賞受賞作にはつきものの毀誉褒貶だけれど、
評する内容がこれほどくっきりと分かれているところが面白い。


酷評しているやそれに共感している人は、
自分が作中の彼と似ているとは思わない…気づいていない…。

村田紗耶香 又吉直樹 西加奈子 中村文則 朝井リョウ さんの関係ステキ

気になっていた作品を読む機会を得て、面白く、
特に後半は一気に読んでしまいました。

芥川賞を又吉直樹さんと羽田圭介さんがW受賞したのが契機だったでしょうか。

村田紗耶香さんや西加奈子さん、中村文則さん、朝井リョウさんを
はじめとする作家の方々に読書家の若林恭二さんMCの
テレビ番組などでお目にかかる機会が増えました。

現代社会とそこに生きる人間を
それぞれの語り口で書いてくださる皆さんを
作品以外から垣間見れることは嬉しく、
作品への入り口としての貴重なものだと思います。

自分を分類するなら「コンビニ人間」作中の
男性のほうだと自覚しつつ、感想を書いてみました。

「コンビニ人間」の幸せを家族や他人が自分の(社会)物差しで測らないで

主人公がコンビニのルールとルーティーンに忠実な枠内という
限られた空間とはいえ、とても能動的で生き生きと働き、
生きている様をとても清々しくさえ感じました。

還暦を過ぎた身からすると、
多くの大人がマニュアル人間化していることに驚く日々です。

何かと「誰も教えてくれなった」と、
NHKの人気アナウンサーでさえ言ってのけることに唖然としたこともありました。

マニュアルが無いと出来ないという言い訳は
もう認めざるを得ない社会のようです。

ならば、その中で生き生きと、
正確に、積極的に働く主人公は応援したくなります。

ただ、
本人が「使えなくなる」ことを恐れているのは、
ゆとりを許さない厳しい現代の資本主義社会の哀しい
現実に胸が痛くなります。

もちろん、現代社会の象徴がコンビニなのですが。

とっくに人間は疎外されて、
「コンビニ人間」として生きるしかなく、それには使用期限がある…。

社会的マジョリティー(あえて普通)の言動は概ね正しくもあるとは思う

先に書いたように正しいと思っているから
と他人に押し付けるのは好ましくないどころが、
時に相手を苦しめることになります。

それはそれとして、
保身バイアスや臆病さが根底にある
非婚化を多様性のもとに「声高に」肯定し過ぎるのも
いかがなものかと思っています。

デリカシーや思い遣りのない言動は論外としても、
結婚して子どもを持つことは肯定的に捉えてほしいと思います。

確固たる信念がある方は別として、
なんとなくの晩婚化や非婚化、
ましてや「結婚はコスパが悪い」という視野の狭さは気の毒です。

自分の人生にコストパフォーマンス持ち込むのはそもそも、何かが違うと思う。

30代や40代の自分のままでいられないこと、
体力や知力が衰えることは確かな事実です。

60代以降の自分を想像しているのでしょうか。

喜怒哀楽の全てを色濃く教えてくれ、
自分を鍛え、育ててくれる「子育て」を回避
(やむおえなかったり、信念あってという方は別なのであえて「回避」と表現しました)して、
生老病死の後半を耐えられるでしょうか。

凡人には、
結婚したり、離婚したり、
子育てに苦労することって大切なことのような気がしています。

自意識の肥大化ゆえに自立さえできない人は可哀想だけど困った人

アマゾンのレビューを見て驚いたのは、
とても高く評価している人は主人公に、
酷く低い評価している人が本作の主人公と彼女に深く関わる男に
瓜二つなことです。

芥川賞受賞作にはつきものの毀誉褒貶だけれど、
評する内容がこれほどくっきりと分かれているところが
実に興味深い(と、ガリレオなら言うに違いない)。

酷評しているやそれに共感している人は、
自分が作中の彼と似ているとは思わない…気づいていない?

芥川賞選考委員の中で島田雅彦さんだけが酷評だったようですが、
これもなんだかアマゾンでレビューで低く評価される方との
似た匂いを感じてしまいました。

作家に留まらない島田雅彦さんが好きな私ですが、
コンビニ人間の評価を読んでふと感じてしまいました。

島田さんは「作中の彼」の大成功例、
彼が成りたかったと想像すら及ばない頂点に達した方なのではと。

もちろん、ただ頑固に古き良き文学性を主張されている訳ではなく、
ご自分の役割りだと認識なさってのことだとは思います。

感想を書くに当たって驚いたのは、
又吉直樹さんの「火花」(2015年)と「コンビニ人間」(2016年)の
担当編集者さんが文藝春秋2007年入社の
浅井茉莉子さんということでした。

文庫本の解説を書かれているのが
中村文則さんで、それがまた凄まじく良いのです。

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